カメラを始めたばかりの人から、よくこんな質問をされます。
「この写真みたいに撮りたいんですけど、
設定は何ですか? シャッタースピードは? 絞りは?」
はじめに:設定を真似しても、同じ写真にはならない
そして、私がそのとおりに設定を教えて、
同じ場所で撮ってもらっても、
まったく同じ写真にはならないんですね。
これはスタッフでも、友人でも同じでした。
でも私は、写真を見て
「うまい・へた」を判断することがほとんどありません。
理由はシンプルで、
その人が撮った写真は その人の写真 だから。
写生大会で同じ風景を描いても全員違う。
同じ音楽を演奏しても、奏者で音が変わる。
写真もまったく同じです。
そしてこの違いこそが、写真の一番おもしろい部分だと私は思っています。
写真は「光 × 距離 × タイミング」で99%変わる
設定はあくまで結果を整える道具にすぎません。
むしろ写真の本質は、次の3つで大きく変わります。
● 光(どこから、どんな強さで当たっているか)
● 距離(被写体との距離、前後にあるもの)
● タイミング(動き・表情・風・揺れ)
たとえば同じAモード(絞り優先)、
同じF2.8、
同じ焦点距離のレンズを使っても、
- 光が少し動くだけで
- カメラの角度が2〜3度変わるだけで
- 被写体との距離が数十センチ違うだけで
写真の表情はまったく別物になります。
カメラマンが現場で何をしているかというと、
私の場合は設定よりもこの「3つの条件」を最初に見ています。
むしろ設定は「条件を活かすために後から調整するもの」。
だから、
設定だけ真似しても、条件が違えば同じ写真にはならない
というわけです。
写真にはその人の癖(センス)が必ず出る
絵を描くとき、線の強さ・丸み・色の選び方などに
その人のクセが出るように、
写真にも無意識の「クセ」があります。
- 近づくタイプの人
- 遠くから様子を捉えるタイプの人
- 下から撮る人
- 真正面が好きな人
- 背景を入れたがる人
- 主役だけを切り取る人
この癖は設定とはまったく関係がないのに、
写真の印象のほとんどを決めています。
だから私は人の写真を見て、
「この人はこういう風に世界を見ているんだな」と感じるだけ。
上手いとか下手とかよりも、
その人の視点が写っていることが大事だ と考えています。
「うまい・へた」は光と判断の差でしかない
写真が上手いというのは、
センスの差と思われがちですが、実際のところは続けるとこうなります。
- 光の変化に気づけるようになる
- 背景の処理を意識できるようになる
- 主役と脇役のバランスが見えるようになる
- 不要なものに気づいて動けるようになる
これは技術ではなく、
判断の積み重ね です。
だから、テクニック本や公式説明を読んでも、
判断の経験がなければ上達しません。
設定は後からついてくるもので、
判断が先。
これは現場でずっと撮影してきて、
一番強く実感した部分です。
同じ場所・同じ被写体・同じ設定でも…違いが生まれる瞬間
私がスタッフに指導していた頃、
こんな出来事がありました。
同じ場所で、同じ被写体を、
私とスタッフが並んで撮影。
設定も同じ。
それでもスタッフの写真は、私の写真とはまるで違いました。
でもそれは失敗でもなく、
その人の視点が良く出た写真なんです。
例えば、
- スタッフは少し高い位置から撮っていた
- 私は逆に、しゃがんで目線の高さを合わせていた
- スタッフは背景を気にせずシャッターを切った
- 私は背景の不要物を避けるために半歩動いた
この 半歩の差を積み重ねたものが写真の差 になります。
だから私は、
誰かの写真を見て「違う」とは思っても、
「うまい・へた」とは思いません。
その人が、その瞬間に、その判断をした
というただそれだけのこと。
そこに価値があります。
写真は「技術のコピー」ではなく「体験の積み重ね」
設定や機能は、
メーカーの説明がいちばん正確。
でも写真の良し悪しは、
メーカーでは説明しきれません。
光の読み方、タイミングの見極め、
どこを主役にするか、どこに立つか…
こういう判断は、
現場で体験して、失敗して、また撮って、少しずつ身についていくもの。
だからこそ、
同じ設定で同じ写真にならないのは当然。
むしろ、
設定が同じでも写真が違うのは、
その人が見た世界が写真に出ている証拠。
私はそれが、写真のおもしろさだと思います。
まとめ:写真はその人らしさが出るから面白い
- 設定を真似しても同じ写真にならない
- 光・距離・タイミングで写真は99%変わる
- その人の癖が写真に自然と出る
- 上手さは判断の積み重ね
- 技術のコピーより、体験の積み重ねが写真を作る
だから私は、
人の写真を見て「それがその人の写真だから」と思うし、
うまい下手ではなく
どんな判断をしたのかに興味があります。
これは、撮影の現場に長くいて、
何千枚・何万枚と見てきた中で得た実感です。
写真は技術よりも、
人の感覚と判断の記録 です。
それが、
設定を真似しても写真が同じにならない理由。



コメント