卒業式という、止められない現場
入学や卒業のシーズンになると、撮影現場の空気はいつもと少し違います。
静かで、厳かで、そしてやり直しがきかない。
特に卒業証書授与のシーンは、独特の緊張感があります。
私の会社では、少ない学校で約100名、多いところでは160名を超える卒業生を撮影します。
一人につき2〜3カット撮るため、合計で200〜300発。体育館という決して明るくない環境で、短い間隔のまま同じ距離・同じ構図で発光を繰り返します。
この条件は、クリップオンストロボにとって決して過酷な状態。
先日のスタッフミーティングで、担当カメラマンの使用機材が話題に上がりました。使う予定だったのは Nikon SB-900 です。
決して悪い機材ではありません。
むしろ長年、多くの現場で使われてきたモデルです。ただ、卒業式という条件で考えたとき、どうなのかな…?。
Nikon SB-900が「止まる」と言われる理由
Nikon SB-900には過熱保護のセーフモードがあります。
連続発光によって内部温度が上昇すると、自動的に発光を停止し、機材を守る設計です。これは欠陥ではなく、安全機能です。
しかし問題は、そのタイミング。
条件次第では100発前後で警告が出ることもあります。環境や発光量によって差はありますが、卒業式のように短時間で連続発光が続く現場では、決して珍しい話ではありません。
数分待てば復帰します。ですが、壇上で次の卒業生が呼ばれているときに「少し待ってください」とは言えません。
止まる可能性があるという事実は、それだけで現場リスクになります。
セーフモードは解除できる。でも、その先にあるものとは
ここで「セーフモードは解除できますよね」と言われることがあります。
確かにNikon SB-900はサーマルカットを無効にする設定が存在します。
発光停止を回避し、撮影を続けることは可能です。
ただし、それは内部温度の上昇を制限しないということでもあります。
発光部付近のプラスチックパーツが変形したり、最悪の場合は溶解する可能性もあります。実際にヘッド内部が傷んだ事例もあります。
止まらない代わりに、壊れるかもしれない。
この選択を、本番の卒業式で撮れるかどうか。
私たちは「撮らない」と判断しました。
危険という言葉は強いですが、あえて使います。仕事として考えたとき、機材の損傷リスクを抱えたまま本番に臨むのは少々危険。
会社としての判断と、貸し出し対応
最終的に、担当カメラマンには Nikon SB-5000 を貸すことにしました。幸い複数台所有していましたので対応できました。
卒業式という条件下で、より安定性が高いと判断したから。
Nikon SB-900を否定したいわけではありません。通常の撮影や発光回数が少ない現場では十分に使えます。ただ、200発を超える可能性がある式典では、余裕を持った選択をしたい。
会社としては、「最後まで止まらない可能性が高いかどうか」を基準にしました。
それは機材スペックの優劣ではなく、現場適性の問題。

卒業式をこれから撮る方へ
もしこれから卒業式を担当されるなら、一度シミュレーションしてみた方が良いかもです。
実際に連続発光させて、どの程度でチャージが遅くなるのか、警告が出るのかを確認してみる。
大丈夫だろう、は本番では通用しません。
卒業式は一度きりです。生徒にとっても、保護者にとっても。私たちはその一瞬を預かる立場にあります。
だからこそ、止まるかもしれない機材より、止まらない可能性が高い機材を選びたい。
これは批判ではなく、現場で感じた実感。

シーズンが本格化する前に、今一度ストロボの設定と運用をチェックしてみては…。
あなたの機材は、本番で最後まで光り続けますか。



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